続き

 

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(四)世界一安全・安心な国

 

 経済だけではありません。様々なリスクにさらされる国民の生命と財産を、断固として守る、「強靭(じん)な国づくり」も急務です。

 旅行で、仕事で、普段何気なく通るトンネルで、その事故は起きました。笹子トンネル事故です。

 私の育った時代、高速道路が次々と延びていく姿は、「成長する日本」の象徴でありました。しかし、あの頃できたインフラが、老いつつある。人の命まで奪った現実に、向き合わなければなりません。

 

 命を守るための「国土強靭(じん)化」が、焦眉(び)の急です。首都直下地震や南海トラフ地震など、大規模な自然災害への備えも急がなければなりません。徹底した防災・減災対策、老朽化対策を進め、国民の安全を守ります。

 

 治安に対する信頼も欠かせません。ネット社会の脅威であるサイバー犯罪・サイバー攻撃や、平穏な暮らしを脅かす暴力団やテロリストなどへの対策・取締りを徹底します。

 

 悪質商法によるトラブルから、消費者を守らねばなりません。地方の相談窓口の充実や監視強化などによって、消費者の安全・安心を確保します。

 

 「世界一安心な国」、「世界一安全な国、日本」を創り上げます。

 

 

(五)暮らしの不安に一つひとつ対応する政治

 

 さて、今、この演説を聞く国民一人ひとりが、悩みや不安を抱えておられます。

 家計のやりくり、教育、子育て、介護。こうした不安に目を向け、一つひとつ対応することも、政治の使命です。

 「車座ふるさとトーク」を始めました。皆さんの声を直接お伺いするため、閣僚が、地方に足を運びます。一人ひとりの思いを、直接、具体的な政策につなげていきます。

 

(子どもたちが主役の教育再生)

 子どもを持つ親は、常に子どもの教育に頭を悩ませています。

 いじめや体罰を背景に、子どもの尊(とうと)い命が絶たれる事案が発生しています。「子どもの命は何としても守り抜く」との強い意志と責任感を、私たち大人が持って、直ちに行動に移さねばなりません。

 

六年前に改正した教育基本法を踏まえ、現場での具体的な改革を進めます。まずは、先般、「教育再生実行会議」が取りまとめた、道徳教育の充実を始めとする、いじめ対策の提言を実行します。

 

 教育現場で起きる問題に、的確で速やかな対応が行える体制を整えます。現行の教育委員会制度について、責任体制を明確にすることを始め、抜本的な改革に向けた検討を進めます。

 

 学力の向上も、公教育に求められる重要な役割です。世界トップレベルの学力を育むため、力ある教師を養成し、グローバル化に対応したカリキュラムなどを充実していきます。「大学力」は、国力そのものです。大学の強化なくして、我が国の発展はありません。世界トップレベルとなるよう、大学の在り方を見直します。

 

 私も、子どもの頃、野球選手や警察官などと、色々な「夢」を見ました。教育再生とは、子どもたちが、「夢」を実現する意志を持って、自分たちの道を歩んでいけるよう手助けするためのものに他なりません。

 その主役は、子どもたちです。

 

 六・三・三・四制の見直しによる「平成の学制大改革」を始め、教育再生に向けた具体的な課題について、今後検討を進めます。

 

(子育て・介護を支える社会)

 子育てに頑張るお父さんやお母さんが、育児を取るか仕事を取るかという二者択一を迫られている現実があります。

 待機児童の解消に向けて保育所の受入児童数を拡大します。多様な保育ニーズに応えるためには、休日・夜間保育なども拡充していかねばなりません。放課後児童クラブを増設し、地域による子育て支援も力を入れてまいります。

 

 仕事との両立支援と併せ、仕事への復帰を応援します。両立支援に取り組む事業者への助成、マザーズハローワークの拡充に取り組みます。

 

 年老いた親の介護と仕事の両立に御苦労される方も、増えつつあります。

 介護と仕事も、両立しやすい社会を創っていかねばなりません。まずは、その第一歩として、両立するための知識やノウハウを、働く方々や職場に周知して、様々な支援を受けられるようにします。地域のお年寄りの皆さんに、質が高く、必要な介護が行われる体制も整えます。

 

 全てを家庭に任せるのではなく、社会も共に子育てや介護を支えていきます。

 

(女性が輝く日本)

 他方、家庭に専念して、子育てや介護に尽くしている方々もいらっしゃいます。皆さんの御苦労は、経済指標だけでは測れない、かけがえのないものです。

 

 皆さんの社会での活躍が、日本の新たな活力を生み出すと信じます。皆さんが、いつでも仕事に復帰できるよう、トライアル雇用制度を活用するなど、再就職支援を実施します。

 

 仕事で活躍している女性も、家庭に専念している女性も、全ての女性が、その生き方に自信と誇りを持ち、輝けるような国づくりを進めます。皆さん、女性が輝く日本を、共に創り上げていこうではありませんか。

 

(誰もが再チャレンジできる社会)

 老いも若きも、障害や病気を抱える方も、意欲があるならば、世のため人のために活躍できる機会を創ります。その先に、活力あふれる日本が待っています。

 

 個々の事情に応じた就労支援を、きめ細かく行います。「若者・女性活躍推進フォーラム」の場を通じて、更なる課題を抽出し、具体策を検討していきます。

 

 一度の失敗で烙(らく)印が押され、「負け組」が固定化するような社会は、「頑張る人が報われる社会」とは言えません。何度でもチャレンジできる社会を創り上げてまいります。

 

(持続可能な社会保障制度の構築)

 しかし、どんなに意欲を持っていても、病気や加齢などにより、思い通りにならない方々がいらっしゃいます。

 こうした方々にも安心感を持っていただくため、持続可能な社会保障制度を創らねばなりません。少子高齢化が進む中、安定財源を確保し、受益と負担の均衡がとれた制度を構築します。

 

 自助・自立を第一に、共助と公助を組み合わせ、弱い立場の人には、しっかりと援助の手を差し伸べます。自由民主党、公明党、民主党による三党間での協議の進展も踏まえ、社会保障制度改革国民会議において御議論いただき、改革を具体化してまいります。

 

 国・地方のプライマリーバランスについて、二〇一五年度までに二〇一〇年度に比べ赤字の対GDP比の半減、二〇二〇年度までに黒字化、との財政健全化目標の実現を目指します。

 

 

(六)原則に基づく外交・安全保障

 さて、外交・安全保障について、お話しいたします。

 私の外交には、原則があります。先般のアセアン諸国訪問の際には対アセアン外交の五原則を発表しましたが、私の外交は、「戦略的な外交」、「普遍的価値を重視する外交」、そして国益を守る「主張する外交」が基本です。傷ついた日本外交を立て直し、世界における確固とした立ち位置を明確にしていきます。

 

 その基軸となるのは、やはり日米同盟です。

 開かれた海の下、世界最大の海洋国家である米国と、アジア最大の海洋民主主義国家である日本とが、パートナーを成すのは理の当然であり、不断の強化が必要です。

 

 先日のオバマ大統領との会談により、緊密な日米同盟は完全に復活いたしました。政治、経済、安全保障だけではなく、アジア・太平洋地域、更には国際社会共通の課題に至るまで、同じ戦略意識を持ち、同じ目的を共有していることを確認したのであります。緊密な日米同盟の復活を内外に示し、世界の平和と安定のために、日米が手を携えて協力していくことを鮮明にすることができました。

 

 日米安保体制には、抑止力という大切な公共財があります。これを高めるために、我が国は更なる役割を果たしてまいります。同時に、在日米軍再編には、現行の日米合意に従って進め、抑止力を維持しつつ、沖縄の負担軽減に全力で取り組みます。特に、普天間飛行場の固定化はあってはなりません。沖縄の方々の声によく耳を傾け、信頼関係を構築しながら、普天間飛行場の移設及び嘉手納以南の土地の返還計画を早期に進めてまいります。

 

 北朝鮮が核実験を強行したことは、断じて容認できません。安保理決議にも明確に違反するものであり、厳重に抗議し、非難します。北朝鮮が平和と繁栄を求めるのであれば、このような挑発的な行動を取ることが何の利益にもならないことを理解させるべく、米国、韓国を始め、中国、ロシアといった関係国と連携して、断固たる対応を追求します。

 

 拉致問題については、全ての拉致被害者の御家族が御自身の手で肉親を抱きしめる日が訪れるまで、私の使命は終わりません。北朝鮮に「対話と圧力」の方針を貫き、全ての拉致被害者の安全確保及び即時帰国、拉致に関する真相究明、拉致実行犯の引渡しの三点に向けて、全力を尽くします。

 

 拉致、核、ミサイルの諸懸案の包括的な解決に向けて具体的な行動を取るよう、北朝鮮に強く求めます。

 尖閣諸島が日本固有の領土であることは、歴史的にも国際法上も明白であり、そもそも解決すべき領有権の問題は存在しません。

 先般の我が国護衛艦に対する火器管制レーダー照射のような、事態をエスカレートさせる危険な行為は厳に慎むよう、強く自制を求めます。国際的なルールに従った行動が必要であります。

 

 同時に、日中関係は、最も重要な二国間関係の一つであり、個別の問題が関係全体に影響を及ぼさないようコントロールしていくとの「戦略的互恵関係」の原点に立ち戻るよう、求めてまいります。私の対話のドアは、常にオープンです。

 

 韓国は、自由や民主主義といった基本的価値と利益を共有する最も重要な隣国です。朴(パク)槿(ク)惠(ネ)新大統領の就任を心より歓迎いたします。日韓の間には、困難な問題もありますが、二十一世紀にふさわしい未来志向で重要なパートナーシップの構築を目指して協力していきます。

 

 もう一つの隣国であるロシアとの関係は、最も可能性に富んだ二国間関係の一つであります。本年に予定されているロシア訪問を、日露関係の発展に新たな弾みを与えるものとしたいと考えています。アジア・太平洋地域のパートナーとしてふさわしい関係を構築すべく、日露関係全体の発展を図りながら、最大の懸案である北方領土問題を解決して平和条約を締結すべく、腰を据えて取り組みます。

 

 緊密な日米関係を基軸として、豪州やインド、アセアン諸国などの海洋アジア諸国との連携を深めてまいります。G8、G20や我が国で開催する第五回アフリカ開発会議などの国際的枠組みを通じ、貧困や開発といった国際社会に共通する課題の解決に向け、我が国は、世界の大国にふさわしい責任を果たしていきます。

 

 

(七)今、そこにある危機

 我が国の領土・領海・領空や主権に対する挑発が続いており、我が国を取り巻く安全保障環境は、一層厳しさを増しております。

 先般、沖縄を訪問し、最前線で任務に当たっている、海上保安庁や警察、自衛隊の諸君を激励する機会を得ました。その真剣なまなざしと、みなぎる緊張感を目の当たりにしました。彼らを送り出してくれた御家族にも、感謝の念で一杯です。

 

 私は、彼らの先頭に立って、国民の生命・財産、我が国の領土・領海・領空を断固として守り抜く決意であります。

 十一年ぶりに防衛関係費の増加を図ります。今後、防衛大綱を見直し、南西地域を含め、自衛隊の対応能力の向上に取り組んでまいります。

 

 我が国の外交・安全保障政策の司令塔となる「国家安全保障会議」の設置に向けた検討を本格化します。同時に、「安全保障の法的基盤の再構築に関する懇談会」において、二十一世紀の国際情勢にふさわしい我が国の立ち位置を追求してまいります。

 

 危機にあって、大切なことは、大局を見失わないことです。

 我が国の国益は、万古不易です。我が国の存立基盤である「海」を、徹底してオープンなものとし、自由で平和なものとすることであります。

 「全世界にとっての基本的に重要な原則、すなわち何よりも国際法が力の行使に勝たなくてはならないという原則を守ろうとしていた」

 フォークランド紛争を振り返って、イギリスのマーガレット・サッチャー元首相は、こう語りました。

 「海における法の支配」。私は、現代において、「力の行使による現状変更」は、何も正当化しないということを、国際社会に対して訴えたいと思います。

 

 安全保障の危機は、「他人事」ではありません。「今、そこにある危機」なのです。

 今、この瞬間も、海上保安庁や警察、自衛隊の諸君は、強い意志と忍耐力で任務に当たっています。荒波を恐れず、乱気流を乗り越え、極度の緊張感に耐え、強い誇りを持って任務を果たしています。皆さん、与野党を超えて、今、この場から、彼らに対し、感謝の意を表そうではありませんか。

 

 

(八)おわりに

 江戸時代の高名な学者である貝原(かいばら)益軒(えきけん)は、牡(ぼ)丹の花を大切に育てていました。ある日、外に出ていた間に、留守番の若者が、その花を折ってしまいました。怒られるのではないか、と心配する若者に対して、益軒(えきけん)は、こう述べて許したと言います。

 

 「自分が牡(ぼ)丹を植えたのは、楽しむためで、怒るためではない。」

 「何のため」に牡(ぼ)丹を植えたのか、という初心を常に忘れず、そこに立ち戻ることによって、寛大な心を持つことができた益軒(えきけん)。

 私は、この議場にいる全ての国会議員の皆さんに、呼び掛けたいと思います。

 我々は、「何のため」に、国会議員を志したのか。

 それは、「この国を良くしたい」、「国民のために力を尽くしたい」、との思いからであって、間違っても、政局に明け暮れたり、足の引っ張り合いをするためではなかったはずです。

 

 全ては国家、国民のため、互いに寛容の心を持って、建設的な議論を行い、結果を出していくことが、私たち国会議員に課せられた使命であります。

 

 議員定数の削減や、選挙制度の見直しについても、各党各会派で話し合い、しっかりと結論を出していこうではありませんか。

 憲法審査会の議論を促進し、憲法改正に向けた国民的な議論を深めようではありませんか。

 政権与党である自由民主党と公明党が、政権運営に主たる責任を負っていることは言うまでもありません。その上で、私は、各党各会派の皆さんと丁寧な議論を積み重ね、合意を得る努力を進めてまいります。

 

 この議場にいらっしゃる皆さんには、是非とも国会議員となったときの熱い初心を思い出していただき、どうか建設的な議論を行っていただけますよう、最後にお願いして、私の施政方針演説といたします。

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