【安倍内閣総理大臣 施政方針演説】

 
安倍総理大臣は、今日28日の衆議院本会議で施政方針演説を行いました。
 
 
(一)はじめに
 
 「強い日本」。それを創るのは、他の誰でもありません。私たち自身です。
 
 「一身独立して一国独立する」
 
 私たち自身が、誰かに寄り掛かる心を捨て、それぞれの持ち場で、自ら運命を切り拓こうという意志を持たない限り、私たちの未来は開けません。
 
 日本は、今、いくつもの難しい課題を抱えています。しかし、くじけてはいけない。諦めてはいけません。
 
 私たち一人ひとりが、自ら立って前を向き、未来は明るいと信じて前進することが、私たちの次の、そのまた次の世代の日本人に、立派な国、強い国を残す唯一の道であります。
 
 「苦楽を与(とも)にするに若(し)かざるなり」
 一身の独立を唱えた福沢諭吉も、自立した個人を基礎としつつ、国民も、国家も、苦楽を共にすべきだと述べています。
 「共助」や「公助」の精神は、単に可哀想(かわいそう)な人を救うことではありません。
 
 懸命に生きる人同士が、苦楽を共にする仲間だからこそ、何かあれば助け合う。そのような精神であると考えます。
 
 
(二)被災者の皆さんの強い自立心と復興の加速化
 
 「みんなで声を掛け合って、励まし合っている。」
 総理就任以来、私は、毎月、被災地を訪問し、避難生活を強いられている方々の声を直接伺ってまいりました。
 
 仮設住宅の厳しい環境の下でも、思いやりの心が、そこにはありました。自立して支え合おうとする気概を感じるのです。
 
 一方、個人の意志や努力だけではどうにもならない問題が、今なお立ちはだかっています。高台移転は、ようやく動き始めたものの、土地の買収や、様々な手続により、大幅な遅れが目立ちます。
 
 仮設住宅暮らしの長期化による、先の見えない不安。お年寄りの方からは、「時間がない」という悲痛なお話も伺いました。
 
 「どんなに小さくてもいいから、自分の家に住みたい」
 
 今を懸命に生きる人たちに、復興を加速することで、応えていかねばなりません。解決すべき課題は、地域ごとに異なりますが、復興庁が、現場主義を徹底し、課題を具体的に整理して、一つひとつ解決します。
 
 福島は、今も、原発事故による被害に苦しんでいます。子どもたちは、屋外で十分に遊ぶことすらできません。除染、風評被害の防止、早期帰還に、行政の縦割りを排し、全力を尽くすべきは当然です。しかし、私たちは、その先にある「希望」を創らねばなりません。
 
 若者たちが、「希望」に胸を膨らませることができる東北を、私たちは創り上げます。それこそが、真の復興です。
 
 既に、再生可能エネルギー産業や医療関連産業など、将来の成長産業が東北で芽吹きつつあります。復興を更に強力に進めるため、復興予算十九兆円枠を見直し、必要な財源を確保することとしました。
 
 今年も、間もなく三月十一日がやってきます。厳しく長い冬が続いた東北にも、もうすぐ春が訪れます。冬の寒さに耐えて、春に咲き誇る花のように、「新たな創造と可能性の地」としての東北を、皆さん、共に創り上げようではありませんか。
 
 
(三)経済成長を成し遂げる意志と勇気
 
 さて、日本経済の将来に、今の若者たちは「希望」を持てるでしょうか。
 
 若者たちが、「未来は明るい」と信じることができる、力強い日本経済を立て直すことが、私たちの世代の責任であります。
 「三本の矢」を、力強く、射込みます。大胆な金融政策であり、機動的な財政政策。そして、民間投資を喚起する成長戦略です。
 今までと同じやり方では、激変している国際経済に、立ち向かうことはできません。
 
 日本の経済成長は、世界を覆う大競争の荒波に、ためらうことなく漕(こ)ぎ出していく、私たちの意志と、それから勇気にかかっています。
 
(世界のフロンティアへ羽ばたく)
 正にそうした勇気を示し、遠くアルジェリアの砂漠で働いていた方々が、犠牲となりました。
 彼らに非業の死を遂げさせたテロリストたちの卑劣と非道を、我が国は決して許しません。テロの犠牲を繰り返さないため、何を為さねばならないかを検証し、具体的な対策を進めます。
 
 私が恐れていることは、今回の事件によって、日本人が、世界に羽ばたく意志と勇気を失うことです。
 世界の成長センターは、アジアから、中南米、アフリカへと広がっています。今回犠牲となった方々の志を無にしないためにも、海外の成長を日本に取り込むべく、世界のどこへでも、フロンティアに果敢に飛び込んでいかねばなりません。
 
 そのカバンに詰め込むべき、魅力ある商品は、たくさんあります。
 健康的な日本食は、世界でブームを巻き起こしています。四季の移ろいの中で、きめ細やかに育てられた、日本の農産物。世界で豊かな人が増えれば増えるほど、人気が高まることは間違いありません。そのためにも、「攻めの農業政策」が必要です。日本は瑞穂の国です。息を飲むほど美しい棚田の風景、伝統ある文化。若者たちが、こうした美しい故郷(ふるさと)を守り、未来に「希望」を持てる「強い農業」を創ってまいります。
 
 健康は、誰もが求める、世界共通のテーマです。日本発の技術であるiPS細胞を利用した再生医療・創薬など、最先端の医療技術を積極的に活用して、世界に先駆けて健康長寿社会を目指します。世界に誇る国民皆保険制度が育んだ、我が国の医療技術とサービスに、更に磨きをかけ、国際的な医療協力なども通じて、世界に積極的に展開してまいります。
 
 日本のコンテンツやファッション、文化・伝統の強みも、世界から注目されています。アニメなどのブームを一過性のものに終わらせることなく、世界の人たちを惹(ひ)きつける観光立国を推進することに加え、「クール・ジャパン」を世界に誇るビジネスにしていきましょう。
 それから環境技術です。資源制約を抱える世界で、その解決策を、日本は持っています。ここにも、商機があります。最先端の技術で、世界の温暖化対策に貢献し、低炭素社会を創出していくという我が国の基本方針は不変です。
 詰め込むカバンの中身が、技術、サービス、知的財産など多様化する現代では、活発でフェアな国際競争を確保するため、貿易や投資のルールを国際的に調和していかねばなりません。
 
 我が国は、受け身であってはなりません。グローバルなレベルでも、地域レベルや二国間レベルでも、日本は、ルールを「待つ」のではなく、「創る」国でありたいと考えます。
 
 アジア・太平洋地域、東アジア地域、欧州などとの経済連携を、戦略的に推進します。我が国の外交力を駆使して、守るべきものは守り、国益にかなう経済連携を進めます。
 
 TPPについては、「聖域なき関税撤廃」は、前提ではないことを、先般、オバマ大統領と直接会談し、確認いたしました。今後、政府の責任において、交渉参加について判断いたします。
 意欲のある全ての日本人が、世界の成長センターで、存分に活躍できる環境を整えます。
 
(日本が世界の成長センターになる)
 一方で、日本から世界へという流れだけでなく、世界から日本に、優れた企業や人を集め、日本をもう一度成長センターにしていく気概も必要です。
 
 優れた人たちは、今、日本で能力を発揮したいと考えるでしょうか。
 日本での研究環境に満足できない研究者たちが、海外にどんどん流出しています。
 「世界で最もイノベーションに適した国」を創り上げます。総合科学技術会議が、その司令塔です。大胆な規制改革を含め、世界中の研究者が日本に集まるような環境を整備します。
 
 その萌(ほう)芽とも呼ぶべき「希望」に、私は、沖縄で出会いました。
 「非常に素晴らしい研究機会が与えられると考えて、沖縄にやってきた。」
 アメリカから来たこの学生は、かつてハーバード大学やイェール大学で研究に携わってきました。その上で、昨年開学した沖縄科学技術大学院大学で研究する道を選びました。
 
 最新の研究設備に加え、沖縄の美(ちゅ)ら海に面した素晴らしい雰囲気の中で、世界中から卓越した教授陣と優秀な学生たちが集まりつつあります。沖縄の地に、世界一のイノベーション拠点を創り上げます。
 
 世界初の海洋メタンハイドレート産出試験、世界に冠たるロケット打ち上げ成功率、世界最先端の加速器技術への挑戦など、日本は、先端分野において、世界のイノベーションをけん引しています。
 
 将来の資源大国にもつながる海洋開発、安全保障や防災など幅広い活用が期待できる宇宙利用、テレワークや遠隔医療など社会に変革をもたらし得るIT活用。
 
 日本に「新たな可能性」をもたらすこれらのイノベーションを、省庁の縦割りを打破し、司令塔機能を強化して、力強く進めてまいります。
 世界の優れた企業は、日本に立地したいと考えるでしょうか。
 むしろ、我が国は、深刻な産業空洞化の課題に直面しています。
 長引くデフレからの早期脱却に加え、エネルギーの安定供給とエネルギーコストの低減に向けて、責任あるエネルギー政策を構築してまいります。
 
 東京電力福島第一原発事故の反省に立ち、原子力規制委員会の下で、妥協することなく安全性を高める新たな安全文化を創り上げます。その上で、安全が確認された原発は再稼働します。
 
 省エネルギーと再生可能エネルギーの最大限の導入を進め、できる限り原発依存度を低減させていきます。同時に、電力システムの抜本的な改革にも着手します。
 
 「世界で一番企業が活躍しやすい国」を目指します。
 「国際先端テスト」を導入し、聖域なき規制改革を進めます。企業活動を妨げる障害を、一つひとつ解消していきます。これが、新たな「規制改革会議」の使命です。
 
 行政や公務員制度の在り方も、これまでの改革の成果に加え、国際的な大競争時代への変化をとらえ、改革します。公務員には、誇りと責任を持って、世界との競争に打ち勝つ国づくりを、それぞれの持ち場で能動的に進めるよう期待します。
 
 魅力あふれる地域を創ります。その鍵(かぎ)は、地域ごとの創意工夫を活(い)かすための、地方分権改革です。大都市制度の改革を始め、地方に対する権限移譲や規制緩和を進めます。また、「地域の元気づくり」を応援します。
 
(世界一を目指す気概)
 小さな町工場から、フェラーリやBMWに、果敢に挑戦している皆さんがいます。
 自動車ではありません。東京都大田区の中小企業を経営する細貝さんは、仲間と共に、ボブスレー競技用「そり」の国産化プロジェクトを立ち上げました。
 
 「世界最速のマシンをつくりたい」
 三十社を超える町工場が、これまで培ってきた、ものづくりの力を結集して、来年のソチ五輪を目指し、世界に挑んでいます。
 高い技術と意欲を持つ中小企業・小規模事業者の挑戦を応援します。試作品開発や販路開拓など、新しいチャレンジを応援する仕組みを用意します。
 
 ひたすらに世界一を目指す気概。こういう皆さんがいる限り、日本はまだまだ成長できると、私は、確信しています。
 今一度、申し上げます。皆さん、今こそ、世界一を目指していこうではありませんか。
 
(家計のための経済成長)
 なぜ、私たちは、世界一を目指し、経済を成長させなければならないのか。
 それは、働く意欲のある人たちに仕事を創り、頑張る人たちの手取りを増やすために他なりません。
 このため、私自身、可能な限り報酬の引上げを行ってほしいと、産業界に直接要請しました。政府も、税制で、利益を従業員に還元する企業を応援します。
 
 既に、この方針に御賛同いただき、従業員の報酬引上げを宣言する企業も現れています。うれしいことです。
 家計のやりくりは、大変な御苦労です。日々の暮らしを少しでも良くするために、私たちは、「強い経済」を取り戻します。
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